「ブラジルNPOの貧困削減への挑戦小さな村で始まったベーシックインカム」という同志社大学の新町キャンパスで開催された講演会に参加しました。
ブラジルのNPO、ヘ・シビタス市民活性化研究所の事例紹介と、大学生の実験報告及び全体討論会です。
ベーシックインカムについてご存知ですか?
直訳すれば「基礎的な所得」のこと。国がすべての人に無条件で一定の額を支給する制度のことです。失業手当の給付とか住宅手当の給付でイメージしやすいと思います。この制度には、ある一定の条件があります。ベーシックインカムは、国が税金等で集めたお金の一部を、"すべての人"に"一律"で"再分配"する仕組みです。
その仕組みを草の根で行っているのが、NPOのヘ・シビタスです。
ブラジルでは、2004年に「市民ベーシック・インカム法」が成立しています。しかし税制改革の問題から、完全実施には見通しはたっておらず、市でも支給には至ってはいないが条例制定はされているという状態だそうです。NPOでは、寄附によって資金を集め、農村コミュニティで給付を行っています。
非常に興味深いのは、NPOはただお金を配っているのではないということ。車でコミュニティを巡回し、本やおもちゃを積んで子ども達に無料で貸し出しているということ。ブラジルのパウロ・フレイレの思想が受け継がれているんですね。設立者の一人、ペレイラ氏は環境問題のNPOで働いていて、貧困問題の解決なしには、環境問題の根本的な解決にならないということでベーシックインカムの取り組みを始めたそうです。しかし、農村に貨幣経済による都市の生活文化をもってきてもエネルギー、ゴミ問題といった新たな環境問題を引き起こしかねないということ。
農村というコミュニティで果たしてベーシックインカムという社会保障の理念がどこまで有効なのか考えてしまう一日でした。もちろんこれは、現状のグローバル社会のなかで生じる途上国での様々な課題と共通するのでしょう。